2017年7月のエントリー 一覧

うだるような暑さ続く夏のある日。
夕方――というより夜のはじめにうとうとしていて、夢を見た。


私は時を巻き戻したり、人間に乗り移って行動したりできる"概念"だった。


魔力を持った王と后がいた。王には人間の側室が2人いて、それぞれから女の子(姉)と男の子(弟)が生まれた。
ふたりは姫と王子として育てられることになった。

王子は火と回復の能力を持っている。

王子が10歳ぐらいの時、どこで知り合ったのか城の労働者の男の人と仲良くなった。
ちなみに王子が王子であることはみんな知らない。
1か月半くらい親しくしていて、その日はどこかの地下のようなところで銃術を教えてもらっていた。
王子は愛情に飢えていて、その熊のような大柄で優しい男の人にすっかりなついていた。
なつきすぎて「僕だけのものになって!」とその男の人を困らせた。
王子は男の人の額に銃を突き付けて、さらには銜えさせて脅した。
それでも頷かないと見るや王子は男の人を椅子に縛り付けて、目隠しをして、声帯まで麻痺させてしまった。

王子の気配がなくなると、男の人は息を吐いて音を出し始めた。

おぅー... おぅー...

その声は換気パイプを通って外に聞こえるようだった。
犬や狼の声色に似ていて、そいつらが寄ってくるのかと思って"私"は見守った。
するとその家で飼っている雌牛が狂ったようになって走ってきた。
換気パイプの近くには子牛がいて、雌牛は子牛を見つけて、子牛を連れてまた狂ったように走って離れていった。

その家の娘とその母親が
「もう、かわいそうじゃない! お母さん、ちゃんと見てたの?」
「どうしたのかしらねえ?」
などと話している。

その家の婆も原因を探ろうと外に出てきてパイプから出る変な音に気付く。
「こりゃなんだろうね?」
先ほどの母も寄ってきて聞いている。
男の人は音の出し方を変える。


はっ はっ はっ はっ はっ


聞いている側は、これはただの空気の流れではないようだと感付いて顔を見合わせる。

男の人はなんとかしゃべれないか試してみる。


へぅーーーぷ   へぅーーーぷ


「"HELP"! 誰かいる!」

近所の男衆5~6人が地下に入ってきて白い布やらで拘束されている男の人を見つける。
王子は男の人のすぐ横で寝ていた。
男衆の1人が男の人をほどきにきた。いたずら坊主め、と王子のほっぺたをきゅっとつねる。――王子がパチと目を開ける。
ほかの男衆は何かを探して(侵入経路?)離れたところの物入をみんなで眺めている。

男の人はこのかわいい男の子の恐ろしさを伝えようとするが声帯が麻痺しているためしゃべれない。
すっかりほどかれたところで、起きて立ちあがった王子と対面する。

恐怖。

王子はポケットから手を抜く。

銃。

ためらいもなく引き金を引いた――

――"私"は時間を少し巻き戻した――

近所の男衆5~6人が地下に入ってきて白い布やらで拘束されている男の人を見つける。
王子は男の人のすぐ横で寝ていた。
男衆の1人が男の人をほどきにきた。いたずら坊主め、と王子のほっぺたをきゅっとつねる。――王子がパチと目を開ける。
ほかの男衆は何かを探して(侵入経路?)離れたところの物入をみんなで眺めている。
そのうちのひとりが何気なくガソリン入りの容器を見つけて手に取り、男の人の様子を見にやってくる。

男の人はこのかわいい男の子の恐ろしさを伝えようとするが声帯が麻痺しているためしゃべれない。
すっかりほどかれたところで、起きて立ちあがった王子と対面する。

恐怖。

王子はポケットから手を抜く。

銃。

ガソリン入り容器を持った男衆が気付く。近い。

とっさに蹴り倒し――

ためらいもなく引き金を――

ガソリンをかけた。

引いた。

引火。

王子は炎に包まれた。黒焦げになって小さくなっていくのが見えた。
"私"は安心した――ところが。
炎が小さくなったころ中からきれいな状態の王子が出てきた。

「あっ 回復の能力を使ったんだ」

"私"が思わずつぶやくと、

「馬鹿じゃないの。俺、火は平気だから」

王子が言う。王子は概念である"私"のことを知っている。まっすぐ見据えている。

「えーじゃあ水? ここで水で倒す? むずかしー」

――"私"はあきらめて時間を巻き戻した――

「"HELP"! 誰かいる!」

近所の男衆4~5人が地下に入ってきて白い布やらで拘束されている男の人を見つける。

そのころ"私"はひとりの男衆として城へ行きお后様の前に転がり出た。

「王子が......あなたの義理の息子が、かくかくしかじか」

身体がうまくなじんでいなくて声が出しづらいがなんとか説明する。
お后様はすぐに現場に駆け付けた。


男の人はこのかわいい男の子の恐ろしさを伝えようとするが声帯が麻痺しているためしゃべれない。
すっかりほどかれたところで、起きて立ちあがった王子と対面する。

恐怖。

王子はポケットから手を抜く。

銃。

ためらいもなく引き金を引いた――

ずどん。

ずどん ずどん ずどん

ついでに男衆も撃ち殺してしまった。

そこへ到着したお后様は悲痛な面持ちになった。

「ちょっと時間がシビアすぎませんか」

"私"に苦情さえ言う始末。

対面した王子とお后様。
王子は恨み、憎しみがこもった目でお后様を睨みつける。
一瞬後、パッと身をひるがえしてどこかへ走り去ってしまった。

お后様(役立たず)は"私"の話を聞いて、

「あの子は愛情に飢えていたんですね。この人との関係の中でどうにか心の傷を癒してもらいたい」

と言う。

――"私"はお后様となって、王子と男の人との出会った日に時間を巻き戻した――

それは5月31日だった。葉っぱが青々と茂った気持ちのいい日。
男の人の奥さんはおいしそうなタルトを作っていた。
これを男の人が王子にあげたのが出会いのきっかけ。
まだふたりは出会っていない。
タルトは3切れあった。

"私"は窓の外から様子をうかがっていて、どうにも我慢できなくなったのでドアをたたいた。
后(に扮した"私")の突然の訪問に驚きつつもちょうどあったタルトでもてなしてくれる男の人と奥さん。

タルト、めちゃうま。


――私は時間を巻き戻す――


それは5月31日だった。葉っぱが青々と茂った気持ちのいい日。
男の人の奥さんはおいしそうなタルトを作っていた。
これを男の人が王子にあげたのが出会いのきっかけ。
まだふたりは出会っていない。
タルトは3切れあった。

様子をうかがっていると夫婦はそれぞれ1切ずつ食べ、それから男の人は残った1切れのタルトを持って仕事に出かけた。
男の人の仕事は建築関係。

石畳の広場を通りがかる。
ひとりぼっちの王子に気付く。
タルトをあげる男の人――

そのうち男の人が仕事から帰ってきたので、"私"は家を訪問した。
先ほどの男の子に家族のように接してあげてほしいこと。
かかった費用はすべて支払うことを伝え、前金として十分すぎるほどの金額を渡した。
驚きながらも善良な夫婦は男の子に同情して、引き受けてくれた。


家族ぐるみでの付き合いはうまくいっているかのように見えた。
夫婦には王子よりほんの少し年上の息子がいて、まるで本物の兄弟のように仲良くなった。

ところが、1か月半くらい親しくしていたある日のこと。
夫婦と息子と王子は車でどこかへ向かっていた。
男の人が運転席(ちなみに左ハンドル)、奥さんが助手席、運転席の後ろに王子、助手席の後ろに息子。
その時に奥さんが子供たちになにかお小言を言ったらしい。
不平そうに抗議する息子。
スパリと頸動脈を切る王子。

えっ

がくりと力を失う奥さんに、パニックになった男の人や息子が

「充電しなきゃ! 充電が切れちゃった!」

とコネクタを挿そうとする。(なんかこの世界では普通の概念っぽい)
ところが息子が挿そうとしているケーブルが入らない。
コネクタを見ると――これはtype Cで――

ふたりの反応を冷静に見つめていた王子は

「それはコッチ(←?)にしか使えない。type Bじゃなきゃ」

と言う。それと同時に男の人がtype Bのケーブルを探し当てる。
でも充電の問題じゃないので、奥さんは生き返らない。

王子は冷静に、じっとふたりを見ていた。

それから、ポケットに手を入れて――
小型銃を取り出し――


――"私"は最後まで見ずに時間を巻き戻した――


夫婦と息子と王子は車でどこかへ向かっていた。
男の人が運転席(ちなみに左ハンドル)、奥さんが助手席、運転席の後ろに王子、助手席の後ろに息子。
その時に奥さんが子供たちになにかお小言を言ったらしい。
不平そうに抗議する息子。

"私"(お后様)は車を止めさせた。

ナイフを取り出していた王子に気付き恐怖する一家。

一家を連れて逃げる"私"(お后様)。

怒りに燃えた王子が銃を取り出した。

"私"はお后様の力でバリアを張った。
黄色い光の円柱に取り囲まれる王子。
これで王子は動けないし銃弾も届かない。

走って逃げる。石造りの階段(この町は基本的に石畳で舗装されている)を駆け上がる。

王子はその間バリアを切ろうとしている。
赤い光で四角く切ろうとする――バリアにはじかれる。

階段をさらに駆け上がる。

王子はしばし思考し――
バリアと同じ黄色い光で四角を描く。


ぱりん。


バリアが割れた。

途端に増悪の感情――黒い靄のような、もしくはたくさんの人のような――が我々に襲い掛かる。

それらが――
階段の下から――
奥さんを飲み込み、男の人を、息子を飲み込み――
"私"を――


だめ、死ぬ。

――"私"は5月31日に時間を巻き戻した――


"私"はベッドで目を覚ました。これは私のベッド。アイビーがまず視界に飛び込んできた。


あの一家を守るためには出会わなくするしかないのかもしれない。


でも王子の心の闇はどうすれば?


もっと時間を巻き戻さないといけないのかもしれない。


でもどこまで?

私はしばし目を閉じた。
それから勢いをつけて体を起こす。


とりあえず、タルトを食べに行こう。


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